パナソニックがJR東日本と共同開発した電車と自転車のコラボな旅むけのフォールディング(折りたたみ)バイクである。
コンセプトは持ち運びがラクで、駅のコインロッカーにも入る! というもの。
6.5kgという超軽量化のため(※2013年の現行モデルは6.9kg)、チタン製フレームにチタン製のフォークを採用(※2013年モデルではカーボン製フォークを採用)。
タイヤやチューブに至るまで、専用パーツで徹底的に軽量化されている。
しかしこの軽量化のために、空気がすぐ抜けるとか、パンクしても専用のパッチがないと修理できないなどの不便さもある。
解決のため、AKAMATSU社製のタイヤとチューブを前後に入れた。重量増だが安心第一。
また、変速システムがないため、トレンクルのスペシャルショップ和田サイクル(東京杉並区)で18段化。また、パンク時の処置をスムーズにするため、前輪のハブをAKAMATSU社製に組み直し、同時にブレーキもALFONGA社製に換装して強化。
もともとが20万近くするチャリだが、上記改造によって2005年12月の納車時には30万円強なので安い買い物ではない。(2014年まで販売された再販モデルは33万円)
多段化によって勾配10%の山も登坂できるし、条件がよければ40キロでの巡航も可能。
ただし、登坂の際はショートホイールベースのため、前輪が持ち上がりやすい。高速巡航時も小径ホイールはちょっとした段差で前転を喫してしまうので注意が必要だ。
チタンフレームは節度のあるしなりで衝撃を吸収し、乗り心地はよい。ただ、多段化した場合、駅のコインロッカーには入らなくなる。
基礎知識と前提
JR東日本とパナソニックが1998年に共同開発した輪行(※電車と自転車を組み合わせた旅のスタイルのこと)のためのスペシャル自転車。発売から基本設計を変えず細かなリファインのみで現在でも輪行ファンの根強い指示を得ており、その完成度の高さから類似の自転車も各社から売りだされた。
フレームとフォークはチタン製で、車重は6.5kg。折りたためばJR駅のロッカーにも入る超コンパクト設計。専用輪行バッグを使えば手荷物料金なしで新幹線も在来線にも乗れるし、ラッシュ時間帯をのぞけば、それほど迷惑にもならなさそうな大きさがうれしい。
●トレンクルの再販機種の情報(パナソニック)
http://cycle.panasonic.jp/products/compact/PEHT3.html
18段化のウェポンたる豆チャリ
豆チャリでも、そこは日常プチ革命家、やっぱり街角で「笑い」をとりたいものである。これまで無駄に鍛えてきた筋骨を、この豆チャリに注ぎ込むのだ。
そこで今回は、折りたたみ自転車、そしてトレンクルの改造技術で全国的に名高い「和田サイクルに二度、足を運び、トレンクル多段化について相談した。
純正のトレンクルはてくてく歩く感覚プラスアルファぐらいのコンセプトで設計されているので、変速機はない。女性でも軽くこげる反面、スピードはでない。
ここに目をつけた歴代のエンスーたちの手によって、多段化と高速化への道が地道に開発され、ありがたいことに現在では、和田サイクルに依頼すれば最初からスーパー豆チャリたるトレンクルを完成車状態で手に入れることができる。
ロードレース機材最高峰のDURAACE(デュラエース)のダブルギヤ・クランクに、カプレオ9段カセットスプロケットを組み合わせ、じつに18段。(実際には内側の1枚は干渉して使えないので、16段)
ちゃんと手もとのレバーで確実なギヤ操作が可能。
高速化に合わせて、ブレーキもダブルアームの強力なタイプに換装。(ノーマルブレーキのままだと、ほんとに死にそうになるらしい)
試走で路線バスと対決
折りたたみ自転車は接合部がガタつくイメージが強かった。
剛性を重視したGAAPなどは確かに納得のレベルであるが、そのかわり重量と容積を犠牲にし、折りたたみ機構はあくまで「おまけ」レベルのものになっている。
トレンクルはとにかく軽量、かつ折りたたみ性能を重視したモデルだけに、ガタつきは覚悟していたが、乗ってみて驚いた。ガタがない。接合部をしっかり設計してある。これはすごく感心した。
小径による不安定感。これも想像していたほどではない。ホイールベースやキャスター角といった各部のディメンションがよく練りこまれているのだろう。
また、和田サイクルによる多段化カスタムの仕上がりの確実さにも驚かされた。スムーズで確実なギヤチェンジが可能。折りたたみ時にも邪魔にならないようにワイヤー類はうまく取りまとめられている。
ALHONGA社製のダブルアーチの前後ブレーキは高速域、下り坂でもじゅうぶんな制動を確保している。純正レバーだと握りごこちがふにゃっとしていてもったいない。剛性の高いレバーに換装したいところ。
セライタリア社製のフライト・チタンという軽量快適なサドルが純正で装備されているが、尻がすべって乗りにくかったのと、穴あきタイプのサドルに慣れていることもあったので、同じセライタリア社のフライトシリーズで女性用のフライト・ゲルフロウ・レディに替えた。
トレンクルはポジションの自由度が確保されていないので、前後長の短かいレディス用サドルでも運転上、問題ない。むしろ尻に全体重がかかるポジションだから、レディスでちょうどいいぐらいかもしれない。女性用サドルによって小径のトレンクルがいっそうかわいらしい印象になった。
通常走行で時速20キロから30キロ。条件が悪くなければ30キロ程度で巡航が可能。意外だったのは、段差やギャップに対してのショック吸収性のよさ。車体が全体でしなるような感じで乗り心地がとてもよい。けっして不快なしなりではない。しかしさすがに、立ち漕ぎに耐えるほどの剛性はない。また、高速でコーナリングすると剛性上の理由でけっこう怖かった。
小田原〜ダイナシティ間の路線バスと抜きつ抜かれつして5.5キロの試走をした際、平均時速27キロ、最高速度44キロをメータが記録していた。
歩行者やドライバーの表情をみるに、そうとうのアウラのようである。90キロで走行するロードレーサーと同等の衝撃波をもつと推定する。が、ロードレーサーのように眉をひそめられることもなかった。やはり笑いを誘うのであろう。